夏光

2010年8月24日 読書
ISBN:978-4-16-326310-6 単行本
乾 ルカ 文藝春秋 発売:2007/9 1,500円

ちょっと昔の日本が舞台の第一部3篇と
たぶん最近の日本が舞台の第二部3篇。
それぞれが顔の一部に特殊性に関わる話で。

友達である、特徴的な顔の痣以上に
目に秘密を持つ少年との日々が描かれる「夏光」、
静養先の家に隠れるように棲む女性の口元に驚く「夜鷹の朝」、
自身の不幸を覆そうとこつこつと積み重ねた末に知る耳元の…「百焔」、
屋台ですくってきた金魚になぜかあった「は」、
都会からやってきた転入生との夏休みの日々の中で
体験する不思議な出来事、「 Out of this world」
少し不思議な嗅覚をもつ主人公の
あの時嗅いだ香りの正体が見える「風、檸檬、冬の終わり」。

それぞれの特殊性は生得的なものであったり、
ふとしたきっかけでそうなったりしたもので
世界を救うとか人の為になるとかそういうものではないのだけれど
あるといいなぁと思うものもあって。
その反面、グロテスクな描写も一部にあって少し読みにくい部分もあり。

「夏光」の終盤で悟る部分や
「百焔」で衝撃的に知ることになった上で続いていく部分、
「風、檸檬、冬の終わり」で気付かされる部分なんかが
その先にハッピーエンドが待ち構えているわけではないのだけれど
少しの安心感というか一種の落ち着きを感じるところで。
読む季節としてはちょうど良い1冊だった気がします。


コメント