ISBN:978-4-06-276330-1
辻村 深月 講談社 発売:2009/4 800円

『子どもたちは夜と遊ぶ』を
読んだ時に謎に思った部分の1つが
この作品の中で解かれていてほっと一安心。
辻村さんの作品は出版順に読むのが良いというのが
初めて分かった気がします。

主人公のぼくが持っている
自身でもどういうものなのかはっきり分かっていない特殊な能力は
同じ能力を持つ先生の経験によると生かす条件がかなり細かくて
それでも主人公のぼくは大切な人を傷付けた人間と対峙して
その能力を使おうとする過程で
先生との会話の中で能力の使い方だけでなく
人間の関わりについても教えられ、また考えていく様子は
親が子に語りかけるような
優しさと少しの懐かしさを含んでいて。

真面目で賢くかつ自身の行動に自信を持っている登場人物たちの
行動力や主体性といったものは
後半で先生がぼくに向かって言葉にすることを
言葉そのものではなくても何らかの形で根底に持っていたり
無意識に行動の規範においていたりするからなんだろうなと思ったり。

いつもと同じように振る舞っているはずの自身が
いつもの自身でなかったことに気付かされて
または秘密裏の行動が全て他人に見透かされていて
呆然としてしまったりする部分は
最初から漠然ともう少しいろんな可能性を
考えつつ読んでいく方が良いのかなと感じる部分もあって。

悪意に立ち向かう方法としては
それぞれが考える方法に間違いはないのではとも思うのだけれど
死ということを意識すると
(特にそれが自身のものである場合)
それは自身だけの判断で選ぶことは
決して正しいことではないということを
示しているのかなと思ったり。

人間関係とか死とか、
そういうのを少し考える時に
読み返してみたくなる1冊だった気がします。

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