花束

2010年1月17日 読書
ISBN:978-4-02-250496-8 単行本
木村 紅美 朝日新聞出版 発売:2008/10 1,575円

東京都心から少し離れた、予備校の女子寮に集まった、
様々な地方からやってきた浪人生達22人。
その中から季節毎に1人ずつを主人公にした連作短篇集。

地味な子、派手な子問わず
季節を経るにつれて、内面、中身、そして人間関係に変化が起こって
それと東京という街で生きていることによって
大人へと近づいていく者があれば
逆に何かを失う者もいて。
どちらかと言うと勉強以外の部分に焦点が当てられているのだけれど
勉強をあるという負い目をそれぞれが抱えていること
をきっちり忘れずになかなか思い通りに行かない所も描いていて。

季節が1回りして全てがハッピーエンドとはならないのだけれど
個々の短篇の後のエピローグが秀逸で
そこでこの本のタイトルに気付かされて。
一昨年の末に読んだ『イギリス海岸』もそうだったのですが
本編の最後に付いてくる番外編的部分で
一気に全体が良くなる気がします。
あ、本編が悪かったとかそういうわけではないんですが。

今から考えてみると
受験を失敗したら故郷に戻って働くとか家を継ぐとか
そういう発想が受験当時になかった(考えなくて良かった)
自分は比較的恵まれた環境にいたなと思うばかりです。

現在受験生の方々も
昨日今日と行われたセンター試験で
悲喜こもごもあったかと思いますが
可能性がある限り挑み続けると何かが見えてくるかもしれませんし
あとひと頑張りして頂きたいものです。

過去に受験生だった人は今読んでも良いかなと思うけれど
現役受験生は受験が終わった春になってからお読み下さいませ、
と思う1冊でした。

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