ISBN:978-4-06-276200-7 文庫
辻村 深月 講談社 発売:2008/11 820円

若手写真家として歩む主人公の
その光を得るきっかけになった
少し昔の出来事。

高校生の頃の主人公は
1人でいても誰かといても
自分というものがない事に困りつつ
何となく流されて生きていて
そんな自身の周囲の人や状況を
SFという言葉やドラえもんのひみつ道具に例えて
その状況を憂いたり説明に使ったり。

自身のことを不在と感じつつも
人がいないと寂しくなってしまう所や
人を見捨てきることができないのは
人がいることの大切さを分かっている裏返しなのかなと。
それはドラえもんが抱いているものと
近い部分があるんだろうと勝手に思ってます。

主人公自身のドラえもんに対する愛着と
その主人公に写真のモデル依頼する先輩の
主人公のドラえもんに関する話への理解度の高さに
驚かされつつ(自分なら一度では無理だと思う。
終盤であぁそうなのかと昇華されるんですが)
元彼氏のように光を独占しようとする行為に
苦々しく感じる部分もあり。

そんな苦々しい部分がありつつも
主人公が出会った人に何かをしてあげながら
自身も周囲の人間から温かく迎えてもらっている
ということに気付いた時に
広がる闇に射す光の存在を知ることができたことで
自身の意志を持って生きられるようになったところに
未来が見えたようで読む側として安堵したわけで。

何となく最初の方は入り込みづらい感があるものの
いつの間にかその世界の中に入っているような、
SFな1冊だったかと思います。

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