ISBN:978-4167753979 文庫
伊藤 たかみ 文藝春秋 発売:2009/08 500円

8月31日、何となく何かが終わりそうな感覚があるのは
子供の頃から慣れ親しんだ夏休みの
最終日だったからでしょうか。

この話の主人公にとっての8月最後の日は
翌日に離婚という一つを節目を迎えることになっていて
また自販機補充のアルバイトとして働く先の
先輩の女性は今日でトラックを降りることになっていて。

暑い中、自販機を回りつつ
先輩女性にいろいろ突っつかれながら
出てくる離婚までの過程は…
というところで少しずつ出てくる話は夢を追いかけ続けたり
または夢に敗れてしまう中で出てきた
夫婦間の綻びのようなものが徐々に大きくなっていく様子が
淡々と流れるように起こったかのように描かれているようで。

後から思い返してみると
ここでこうしておけば良かった思う部分が
あるのだろうけれど
その時点では本気で最善の解答を選んだつもりだったかもしれないし
単純に全てを否定することはできないなと。

自分は離婚の以前に結婚の経験すらもないので
もしかしたら遠い世界の話なのかもと思う部分と
近い将来に起こってもおかしくないのかなと思う部分の
相反するような思いが同居している感があり。

あと、スーパーの掲示板の投書のやり取りに興味を抱きつつ
日々を過ごしていく『貝から見る風景』、
禁煙する日々を送りつつ自分の妻や娘夫妻との
平穏な関係を保とうとする『安定期つれづれ』
の2編も含めて、
人生は他者と関わっていく中でずれやひずみみたいなものを
避けては通れないけれどそれを解消してくれるのも
他者であったりで
どこかに均衡のようなものがあるのかなと
ぼんやりとではあるけれども思えた1冊だった気がします。

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