ISBN:978-4-02-250529-3 単行本
津村 記久子 朝日新聞出版 発売:2009/2 1,470円

地元に残っていた、
または地元へ戻ってきた幼なじみの主人公達3人。
そんな3人の実家がある八番筋商店街は彼らの親
もしくはそれ以上の世代で構成された、
一部の権力者の下に成り立つ青年会「カウンシル」が幅を利かせており、
主人公達は彼らの馴れ馴れしさというかセコさというかに辟易しつつ。

そんな中で持ち上がったショッピングモール建設の担当者が
かつてある事件が基で町を追われた主人公の同級生で…。
その事件当時の描写と現在の揺れる商店街の描写が繰り返される中で
当時の新たな事実が分かってきて。

法律で裁くことが困難な暴力やよくない噂などによって傷付けられた者は
どのような行為によって報われるのか
過去は変えられない分、未来をどのようにして形作るのか、
その未来を形成する中で昇華したり、違う形で返したり、
場合によっては過去の痛みと対峙することで別の事柄が見えてきたり。

この話の中でもカウンシルが全て悪と言うわけではなく、
冷静に推移を見つめていた人や自分の形を貫く人もいるし、
主人公側もやられっ放しというわけでなく
意図の有無は別として暴力に対して一矢報いようとする部分があって。
これもその瞬間瞬間の時だけを追っていた事件当時(中学生)の頃から
先を見据えた行動や以前からの計画を形にするような大人になったから
できるのかなと思う部分もあり。
そういう成長という観点から見ると
時間をかける、言い方を変えると生き続けることが重要なのかなと。

人の悪意に出くわすことは過去だけでなく未来にもあるだろうけれど
悲観しすぎることはないと感じられる1冊でした。

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