ISBN:978-4-06-215287-7 単行本
津村 記久子 講談社 発売:2009/2 1,365円

今日東京でサイン会があって行ってきました。
刺青と同じ言葉、
どうもありがとうございました。

それはさておき内容へ。
意外に奈良が舞台でびっくりだった『ポトスライムの舟』。
主人公は工場のラインで働く女性。
ただそれだけではと思って友人のカフェを手伝ったり
パソコン教室のバイトをしていたり。
そんな彼女があるきっかけを元に1つ目標を立てることに。
ただその目標も友人のお誘いや自身の体調不良やらで危うくなって。

母親、友人及びその子供、工場のリーダーと
登場人物のほとんどは女性で
それぞれが相手に入り過ぎこむことはなく
適度なバランスの中で関係を築いていて。
子供を連れて家を出た友人を一時的に自宅へ招き入れるうちに
自身の将来への不安や小さな楽しみが現れては消えていく様子が
自分にも課せられているような感覚になったり。

そんな作中に出てくるポトスは夢自体と似たようなものなのかなと。
水を与えて育てていけば結構大きく育つし
挿し水でどんどん増やしていくことも可能だし。
だからと言って万人に受け入れられるとは限らないし
たまに水をやるのを忘れて萎れかけたり。

そういう意味では最終的に一回り大きくすることができた上で
新たに水差ししようと思うような兆しが見えたことは
非常に良かったのかなと思います。

もう一遍の『十二月の窓辺』は
『ポトスライムの舟』の主人公が最初の会社を辞める経緯になったような話。

理不尽な言動をとる上司に加えて社内に味方がいない中で
怒りのぶつけ先がなくて追い込まれていく状況が描かれていて。
社外にはそういう暴力のようなものはないと思っていたものの
他にもあることを実感して自身の無力さを知ったり。
ここまでやられていたら周りが見えなくなるのも仕方ないかもと思いつつ。
自分も槍玉に挙げられている時期があったのを思い出して
少しブルーな気分と諦観を覚えましたが
それはそれであるものとしてうまく選択・対処せねばと思った部分もあり。

どちらも働くということに対して存在する希望のような何か
について考えるきっかけになる1冊だったかなと思います。

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