風化する女

2009年1月28日 読書
ISBN:978-4-16-325800-3 単行本
木村 紅美 文藝春秋 発売:2007/4 1,200円

表題作と他1編。
突然1人で亡くなってしまった同じ会社の女性。
唯一とも言える話し相手だった主人公が
その女性のいた場所や物に触れていく内に
少し意外な一面を知ったり、知らない土地に足を運んだり。
代わりになろうとしたけれどなりきれなかったのは
女性の存在が風化しつつあるところにもあるのかもしれません。
会話と行動が同時進行しているのを分かるようにか
ちょっと変わったリズムで言葉が挿入されるけれど
それほど読みにくさはなかった気がします。

もう一遍の『海行き』は
学生時代に仲の良かった友人の故郷に
やって行くひと夏のお話。
卒業してからしばらく経って
夢を諦めたり、逆に夢を求めて東京を去っていく友人達と
あまり変わらない自分と。
思い出話を語るように学生時代と今とを行ったり来たりする部分に
なんとなく懐かしさのような感覚も持ちつつ読み進められました。
三陸地方の夏と海があまり結びつくイメージがなかったのですが
結構夏らしくていい感じだなと思いつつ。
個人的にはこっちの作品の方が好きかもしれません。

現実的な部分と瑞々しさのある部分の両方が感じられる1冊かなと思います。

コメント