ISBN:978-4-16-327260-3 単行本
津村 記久子 文藝春秋 発売:2008/7 1,200円

結婚式のしかも二次会の幹事の予定が入っているところに
葬儀の連絡が入った場合どうなってしまうのか
を描いた『婚礼、葬礼、その他』。

個人の事情よりも結婚式、結婚式よりも…と優先順位がついていく中で
食事のタイミングを逃して空腹のまま通夜会場を彷徨いつつ、
自身が不在になった中でコントのように起こる
披露宴内のハプニングを携帯で解決しようとしたり。

主人公にとっては踏んだり蹴ったりで
喜怒哀楽が忙しく出てきて大変なのだけれど
その中に何か落ち着く部分があって。
あえて例えるなら
快晴→台風襲来→台風の目及び吹き返し→台風一過、という感じ。

そんな主人公は大人だなと思うのが
どれだけ空腹でも表向きは取り乱すことなく振舞えるところ。
自分の場合だと睡眠不足と空腹時は
判断が微妙になって一番決壊の可能性が高くなるので。

呼ぶことはほとんどなくて、ほどほどに呼ばれる側の自分としても
呼ぶ人の数は多くなくてもいいからさりげなく呼べる人を
呼んで儀式を執り行う生き方ができればよいかなと感じます。

もう一遍の『冷たい十字路』は
ある地点で起きるある事件を
いろんな人の視点から見た作品。
登場人物の名前はたぶんあの法則に基づいていると思います。
日常と事件が交錯したときの感じ方や捉え方は
こういうものなんだろうなぁという感じです。

津村さんの作品は人が人にあまり踏み込もうとしない描写が
いいなと感じる部分があるのかもしれません。
自分がこちらからあまり踏み込むようなことはしませんので
できればこちらの深い所まで踏み込まないで頂けると幸いです
というスタンスをとっている所があるので。

爽快と言うところまでの読後感はないですが
少しほっとする部分のある、そんな1冊です。

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