蒲公英草紙

2008年7月5日 読書
ISBN:9784087462944 文庫
恩田 陸 集英社文庫 2008/5 ¥500

『光の帝国』の続編、
というよりはそれより前の時代。
一番最初に入っていた「大きな引き出し」の
春田家の先祖にあたる人々?の話。

舞台は明治時代の東北南部の集落。
中心となる名家に様々な個性を持つ客人や土地の名士たちが
ひっきりなしに訪れるという描写に時代を感じます。
そこにちょっと不思議な感じの一家がやってくることで
名家や一家にある不思議な能力について明かされていくことに。
それは「しまう」ちからであったり、「遠目」と呼ばれるちからであったり。

そんな不思議な能力を持っていても病に倒れたり
他の人間を守るために犠牲になったり
力以外の部分は他の人間と同じという部分でありながら
子孫や周りの人たちの為に行動する姿に
何とも言えなくなってしまいます。

不思議な能力や世界と言うと
自分としてはどうしても生まれ育った場所に近い
京都を思い浮かべてしまいがちだったのですが
東京に越してきてから
東北方面にちょくちょく旅行に出かける機会ができ、
各地の祭りや風土に触れていく中で
東北もかなり不思議な世界だなと感じつつあります。
前者が人間に近いもの(人や動物の魂とか)と絡んでいる一方で
後者はより自然に近い何かと結びついているような。

先のことが見える彼らにとっては今の時代はどう見えていたんだろう、
実在するのなら今も子孫のために何かを守ろうとしているんだろうかとか
いろいろ想像力がかきたてられる部分もあり。

懐かしいという感情は記憶や記録があってこそ
という当たり前に思いがちのことを
再認識させてくれる1冊だった気がします。

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