ISBN:4101297711 文庫
瀬尾 まいこ 新潮社 2006/10 ¥380

自分の住んでいるところと
違う世界に入っていくのは
最初のうちは新鮮でずっといたいと
思ったりもします。
この主人公の場合は
行った最初の目的が自殺でしたが。

そんな自殺に失敗し、その地に留まりながら
自然と触れ合っているうちに心地よさを覚えつつも
時間とともにここは自分のいる場所ではないと気付いていく過程が
飾り気なく描かれているのが良い感じです。
自分は実際に居を移した場合を除いて
他の土地でこんな風に感じるほど長く滞在したことはないのですが
この気持ちはなんとなく分かる気がしました。

そして民宿たむらの田村さんと主人公との会話のやり取りが
自然な割におもしろい掛け合いになっているのが良かったです。
両者に天然な部分があり、繊細な部分があり…という感じで。
あと、自分の田舎のものとちょっと異なる丹後地方の関西弁も
会話をいいなと感じさせる要素なのかな、と。

最近この主人公と同じような理由で思い詰めることが多々あるのですが
考え方を転換する上で一つのヒントになったかもしれない一冊です。

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